ごみと不用品の力学
ごみを溶かすことで生まれる溶融スラグの使い道

ごみを溶かすことで生まれる溶融スラグの使い道

近年では、従来の焼却炉に代わって、溶融炉と呼ばれるごみ処理施設が増えています。最大で元のごみの量を6パーセントまで減量できるとして、ごみの埋め立てなどに悩む自治体などから引き合いが増えているようです。

溶融炉で最終的に生成されるごみは、溶融スラグと呼ばれ、溶融スラグはリサイクルされた新たな原料として活用が広がっています。 特に日本は工業製品を作るための資源が乏しい国とされる割に、大量のモノを消費しています。資源の輸入や輸送コストの削減とともに、「地産地消」を考える意味でも溶融スラグを積極的に活用することが必要です。

溶融スラグの活用が最も期待されているのが漁礁ブロックです 溶融スラグの活用が最も期待されているのが、漁礁ブロックです。漁礁ブロックは、生コンなどで簡単に作ることができるように思われがちですが、人工の漁礁では磯焼けするなどして、海藻などの成長が見込めないケースが目立ちます。その点、溶融スラグが作られる過程であえて鉄分を入れ、光合成色素の濃度を高めるようにしたところ、モズクやコンブなどの海藻類が多く生えてきたという報告がされています。 比較のために生コンのみの漁礁ブロックを同じ場所に設置したところ、海藻類の着床に顕著な違いがみられたということで、溶融スラグを魚の生息地に活用する期待度が高まっています。

溶融スラグは、一般の建築現場でも活用されるようになっています。溶融スラグを生コンやアスファルトと混ぜ、道路に敷く路盤材として使用されているようです。また、溶融スラグをタイル材に加工して販売している企業もあります。日本の産業製品を評価する基準であるJIS規格には適応されていません 生コンだけの場合と比較し、溶融スラグを使った生コンは、性能的には問題ないとされていますが、日本の産業製品を評価する基準であるJIS規格には適応されていません。そのため、一般の建築物などで使われることは今のところなく、土木工事全般に使われるにとどまっています。溶融スラグは元の原料がごみということで、イメージとともに強度の面などで心理的な影響があるといわれます。

今後は、実績を作っていくことで用途の拡大が見込めるはずです。