プラスチックごみを食べる虫たち

ごみと不用品の力学
プラスチックごみを食べる虫たち

プラスチックごみを食べる虫たち

プラスチックごみによる海洋汚染を防ぐため、飲食店がプラスチックのストローを廃止する動きが出ています。プラスチックごみは自然には分解されず海洋での滞留時間が長くなるため水質汚染の原因になり、海の動植物の食物連鎖にまで影響を与えます。 こうした海洋プラスチックごみの問題解決にかすかな光明を与えるかもしれない研究が、スタンフォード大学と北京航空航天大学の共同研究チームによって発表されました。同チームによるとミールワームと呼ばれるごみむしだましという昆虫の幼虫が、プラスチックを食べることが発見されたそうです。

研究では100匹のミールワームが餌として与えられた1日当たり34〜39ミリグラムの発泡スチロール(ポリスチレン)を半分は二酸化炭素に、残りの半分は生分解して排泄物として排出したそうです。ミールワームの健康状態は通常の餌を与えたものと変わらず、排泄物も農作物にとって安全だとわかりました。 プラスチックを分解したのはミールワームの腸内に住む細菌です。従来ポリスチレンは生分解できないとされており、世界中で使われているポリスチレンを原料とする発泡スチロールが生分解できることがわかったことは画期的です。

同じくプラスチックを食べる虫として、ハチノスツヅリガの幼虫がいます。研究を率いたのはスペインのカンタブリア大学の発生生物学者フェデリカ・ベルトチーニさんです。ハチノスツヅリガの幼虫は40分でレジ袋に大きな穴を開けました。ハチノスツヅリガの幼虫が食べるのはポリエチレンです。ハチノスツヅリガはハチの巣に寄生する虫で、幼虫は密ろうを食べます。ビニール袋のポリエチレンと蜜ろうは似たような炭素の鎖を持つ構造だったことから、密ろうを分解するための酵素がポリエチレンも分解していると考えられています。 しかしポリエチレンは高品質な樹脂のため虫の生分解に頼って処理するよりも、より価値の高い製品へのリサイクルが望ましいのではないかとする海洋生物学者の意見もあります。